月夜に花が咲く頃に
女の子の顔が明原に近づく。


明原はそれに抵抗もせず、あっさりと女の子のキスを受け入れた。


「ねえ、光ぅ・・・・・・」


女の子の甘い声が鼓膜を震わせる。


あー、これ絶対見ちゃいけないやつ。


明らかにピンクのオーラが出てるんだもん。


さっさと退散しようと物音を立てないようにそーっと足を動かす。


そういえば、明原は特定の彼女は作らないんだろうか。


「ねえ、光は彼女、作らないの?」


ふと思った疑問が、教室の中から聞こえてきて、やっと動かした足をピタッと止めてしまう。


盗み聞きとか、趣味悪い。


なのに、なんとなく明原の答えが聞きたくなってしまって、そのまま聞き耳を立てることになってしまった。


「んー?・・・・・・なんで?」


興味なさげな、明原の声。


少し冷たくも感じるその声に、女の子は気づいているのかいないのか、話を続けた。


「もしかして、元カノのことが忘れられないとかぁ?」


元カノ?


明原にも彼女がいた時期があったのか。


まあ、あいつなら1人や2人いてもおかしくはないけど。


「・・・・・・何それ、そんなのどこで聞いたの」


「噂になってたよ?光が今特定の彼女作らないのは、中学の時に病気で死んじゃった元カノが忘れられないからって」



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