月夜に花が咲く頃に
病気で、死んだ・・・・・・?


なぜか、明原と公園で会ったときのことを思い出す。


少しいらついたような、悲しそうな、あの明原の表情。


なんで、今思い出すんだろう。


「・・・・・・」


「そんな女の子のことなんて、早く忘れちゃいなよ。ねえ、私と付き合お?いつまでもそんな病気なんかで死んじゃった子のこと、光がそんなに考える必要なんてないじゃん?」


女の子の高い声が、甘ったるい猫なで声が、頭に響く。


途端に、教室の中から思いっきり机を蹴飛ばしたような、ガンッという鈍い音がした。


びっくりして教室を再び覗くと、突き飛ばされたであろう女の子は床にへたり込んでて。


その前には、今まで見たことがないほど、怖い顔をした明原が立っていた。


明原・・・・・・?


「・・・・・・悪いけど、その話やめてくんない?ほんと、何も知らないお前が、ペラペラぐちゃぐちゃ言っていいことじゃないんだよ」


感じたことのなかった明原の殺気に、女の子が小さな悲鳴を上げる。


口元は笑っているのに、すごく怒ってるのが伝わってくる。


その姿に、ぞくりと寒気がした。


「ほんとお前さあ、俺の過去のこと引っ張り出してきて、どういうつもり?」


震える女の子の前に、明原がしゃがみ込む。


女の子の胸ぐらを乱暴に掴んだ明原を見て、やばい、と直感的に感じた。





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