月夜に花が咲く頃に
街中を走り回ったけど、明原はどこを探しても見つからなかった。


もうすっかり日は暮れて、空には月や星が輝いている。


奥山にも連絡はしてみたが、あっちも手がかりはゼロ。


ほんとに、どこに行っちゃったんだよ・・・・・・。


ずっと走り回っていたせいで、足がズキズキ痛む。


走っているうちに、ひねったかな。


いつの間にか、街中を出て海の近くまで来てしまったらしい。


波の音が、遠くから聞こえてきた。


ここ、どこなんだろう。


キョロキョロとあたりを見渡すと、近くに大きな白い建物が見えた。


何の建物だろ、あれ。


近づいてみると、建物の入り口のところに、『汐咲(しおさき)病院』と書かれていた。


病院か。こんな街外れに・・・・・・。


びょう、いん?


そういえば、明原の元カノは病気で亡くなったって・・・・・・。


病院のすぐ近くには、海がある。


病室から見たら、きっと海が綺麗に見えるんだろう。


そこまで考えて、脳裏によぎったのは最悪な展開で。


まさか、でも、もしそうなら・・・・・・。


嫌な考えを振り払うように、スマホを手に取って奥山に電話をかける。


『京極さん!?光、見つかった!?』


「ううん、まだ、なんだけど」


『?何かあった?』


「あのさ、奥山、明原の元カノが入院してた病院って、どこだか、分かる?」


息が、上手く吸えない。


『え?確か、汐咲病院、』


奥山が言い切る前に、私はもう、走り出していた。


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