月夜に花が咲く頃に
鬼神は怒鳴られてびっくりしている明原を置いて、倉庫の中へと入ってしまった。


「とにかく、光も京極さんも、無事でよかったよ。二人とも、風邪引かないうちに、シャワー浴びてきなね」


そう言った奥山も、明原の頭を小突いてから、鬼神の後を追っていく。


明原を見ると、呆然と二人の後ろ姿を見ている。


「あんたがどんなにバカなことしても、あいつらはあんたと一緒にいてくれるよ」


「・・・・・・え?」


「あんたにはいるじゃん。立ち止まったときに、背中押してくれる人」


「・・・・・・」


明原はまた黙り込んで下を向いてしまった。


けど、鼻をすする音が聞こえてきて。


私は小さく笑って、明原の背中をさする。


きっと、ずっと我慢してたんだろうな。


いつもバカなことして、女の子口説いてばっかで。


その陰で、必死に自分の思いに蓋をしてたんだろうか。


平気なふりをして、笑顔を作っていたんだろうか。


でも、きっともう、大丈夫だろう。


一人じゃない。


無理に忘れる必要も、もうない。


そのことに気づけたのなら。


やっと、心をむき出しにして涙を流せたなら。


いつかきっと、前を向いて、歩いて行けるから。





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