月夜に花が咲く頃に

――――文化祭当日。


私のクラスはたくさんの人でごった返していた。


コスプレのクオリティが高いと、学校中でいつの間にか噂になったらしく、午後になった今は午前中よりも人だかりが出来ている。


昨日のこともあり、あまり眠れないまま迎えた文化祭。


あくびをかみ殺しながら、メイド服を着て接客中だ。


もう覚悟は決めていたため、もうやけくそでメイド風の言葉をつらつら並べる。


多少棒読みかもしれないが、まあ及第点はくれるだろう。


入り口のところでお客さんを中に案内していると、明原がぴょこん、と姿を現した。


「やっほー、雫ちゃん。メイド服、かわいいね」


前よりも、少し吹っ切れたような笑顔で。


「明原、あんた自分のクラスは?」


「俺午前中の当番だったからもう終わったの。そういえば、紅雅と楓はいないの?」


「二人なら裏で料理作ってるよ」


「なーんだ、じゃあ二人ともコスプレはしてないのか」


明原が残念そうに口を尖らせる。


まあ、あの二人が表立ってコスプレなんてするわけがないよね。


顔がいいから絶対コスプレは似合うだろうし、売り上げも間違いなく上がるだろうけど。


「・・・・・・せっかく来たんだし、お茶していけば?」


「え、いいの?雫ちゃんのことだから、早くどっか行けー、とか言われんのかと思ったんだけど」






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