月夜に花が咲く頃に
「・・・・・・二人とも、そろそろ周りのキャパが限界だからそこら辺にしておこうか」


しばらく私たちの様子を見ていたであろう奥山が、ため息交じりに笑う。


なんのことだ。


「それより京極さん、もうすぐ上がりの時間じゃない?」


「え?あ、ほんとだ。じゃあ着替えようかな」


時計を見れば、もう三時。


そろそろ交代の時間だ。


着替えてくるね、と調理場をあとにして、着替え室へ向かう。


着替え室には、例の魔女の姿に変身した翼と、そのほかの何人かの女の子たちがいた。


「あ、雫お疲れ!」


ばいん、と音が鳴りそうなほど胸を揺らして私に近づいてくる翼に、私も笑いかける。


「ありがと。翼はこれから出るの?」


「うんっ!この衣装が最後の衣装だから、がんばる!」


やる気に満ちあふれている翼はとても可愛くて。


思わず頭をなでてしまう。


「じゃあ、行ってくる!」


「行ってらっしゃい」


元気に手を振る翼に手を振り返した。


さて、私も着替えるか。


メイド服を脱ごうと服に手をかけると、突然ガラッと着替え室のドアが開いた。


「大変!これから出るはずの山田くんが貧血で倒れちゃったって!」


「ええ!?どうすんの、まだお客さんいっぱいいるのに、一人でもかけたら回しきれないよ・・・・・・」


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