月夜に花が咲く頃に

「翼、大丈夫?」


「わ、私は、大丈夫だけど・・・・・・」


「ならよかった」


涙目で私を見る翼の頭を軽くなでる。


「お騒がせして、すみませんでした。文化祭、最後まで楽しんでください」


教室全体に謝ると、次第に教室も賑やかさを取り戻していった。


割れたコーヒーカップを速やかに片付ける。


「雫ちゃん、大丈夫か?背中、熱かったんじゃ・・・・・・」


一部始終を見ていた明原が心配してくれたけど、私はVサインを返す。


「平気平気。それより、明原他のところまわらなくていいの?」


結構な時間ここにいるよね。


まあ、いろんなメニュー注文してくれるからいいんだけど。


「んー、特に行きたいクラスとかなかったしなあ。でも、もうそろそろ出ようかな」


「そっか。ありがとうございました」


明原を入り口まで見送ろうとすると、不意に明原が私の腕を掴んだ。


「雫ちゃんも、行くんだよ」


「へ?でも、まだ私は仕事が・・・・・・」


ある、と言おうとしたのに、明原は私のクラスの子を捕まえて、あっさり私の仕事上がりの許可を得てしまった。


「ほら雫ちゃん、早く行くぞー」


「え、ちょっと待って・・・・・・!」


明原はずんずんと進んでいく。


どこのクラスの中に入るでもなく、ひたすらに。


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