月夜に花が咲く頃に
すっかり外は暗くなって、グラウンドでは後夜祭が行われていた。


キャンプファイヤーやら花火やら、大盛り上がりだ。


今のこの格好で外に出るのは少し恥ずかしいので、明原と一緒に空き教室から外を眺める。


「別に、明原は外に行っていいのに」


「んー?雫ちゃん一人ここに置いてく訳にもいかないでしょ。それに、雫ちゃんに話したいこともあったしね」


夜の空に上がる花火が、明原の横顔を照らす。


なんだか消えてしまいそうな気がして、明原から目を離せなかった。


「あ、きばら・・・・・・?」


そっと声をかけると、明原は窓の外を見つめたまま話し始めた。


「・・・・・・俺さ、正直、まだ気持ちの整理、ついたって訳じゃねえんだよ」


「・・・・・・それは、彼女さんの、こと?」


明原は頷く。


「未だに、なんであいつじゃなきゃいけなかったんだろうとか、俺が代われたらよかったのにとか、そんなこと考えちまう」


それほどに、大きい存在だった。


明原にとって、その女の子は、きっと全てだったんだ。


自分の全てを捧げてでも、離したくない大切な存在。


「でもさ、雫ちゃんに怒鳴られて、なんとなくだけど、このままじゃだめだって思った。俺がずっとこのまま立ち止まってたら、きっとあいつにも怒られちまう」


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