月夜に花が咲く頃に
――――ひょい


ふっと自分の身体が持ち上がる。


翼が口をあんぐり開けてこちらを見上げていた。


「なっ・・・・・・!」


気づけば私は明原から抱えられ、公園から出ようとしていた。


「何してんのよ!!雫返しなさいよ!」


怒り狂ったように大声を上げた翼が、追いかけてくる。


明原はその声には目もくれず、公園の入り口に止まっていた車に私ごと乗り込んだ。


「ちょっと、」


「ガク、出して」


「うっす」


反論する間もなく、車は静かに走り出した。


何、何が起きてるの。


訳が分からず隣に座る明原をぽけっと見ていると、明原はそんな私を見てにっと笑った。


「そんな情熱的に見つめられたら、俺照れちゃう」


何を言ってるんだこいつは。


きゃー、と顔を手で隠して騒ぐ明原。


とてつもなくだるい絡み方をされて、少しイラッとする。


「ちょっと、どこに連れてく気?」


「まあまあ、そんな怒らないで。治療できるところに連れて行くだけだよ」


「治療って、別にあんたにそんなことされる義理は、」


「いやいやお礼とかはいいからさ、俺、フェミニストだし?」


聞いてねえよこいつ。










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