月夜に花が咲く頃に
「それにしても、ほんっとずりいよなあ、雫ちゃんは」


「え、何が?」


「だって矛盾してねえ?普段は人と深く関わるの避けてる感じなのに、誰か困ってるとほっとけねえのな。人が自分の中に入ってくんのは嫌なくせに、いつの間にか人の心にずかずか入り込んでさー」


そ、そんなつもりはなかったんだけど。


仕方ないじゃないか。


身体が勝手に動いちゃうんだから。


「な、なんかごめん」


「ははっ、いいよ。それのおかげで、俺は今生きれてるんだから」


雫ちゃんのお節介のおかげ、と明原が私の頭をなでる。


子供扱いするな、とその手を振り払った。


「ありがとう。雫ちゃん」


「えっ・・・・・・」


突然真剣にお礼を言われ、たじろいでしまう。


「ちょっと、やめてよ。明原に真面目になられたら、どうしていいか分からないじゃん」


「えー?ひどいなー」


すぐに普段通りのおちゃらけた雰囲気に戻った明原を見て、ほっとする。


「ていうか、雫ちゃんいつまで名字呼びなわけ?そろそろ名前で呼んでくれてもいいんじゃない?」


「え、でも今更名前の呼び方変えるのも面倒じゃない?」


「面倒とか言うなよ!とにかく、これからは俺のこと、光って呼ぶように!俺も、雫って呼ぼうかなっ」


相変わらず強引な奴。


でもまあ、いいか。


あっけらかんと笑う光を見てると、こっちまで笑ってしまう。


ほんとに、明るいなあ。


キャンプファイヤーの火が、静かに消えていく。


高校最初の文化祭は、こうして幕を閉じたのだった。




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