月夜に花が咲く頃に
「どうして俺たちがこんなところまで来たのか、知ってる?」


「・・・・・・あ?」


男の声に、紅雅の動きがピタリと止まる。


「昨日、君たちがしょっ引いた連中いたでしょ?薬使ってたってやつ」


「・・・・・・」


「それ、紫樂の奴らもいたんだよねえ。だから、お礼参り?」


仲間がやられた仕返しってこと・・・・・・?


「あの繁華街は暁のシマだ。そこで好き勝手はさせねえ」


「ああ、確かにそうだ。俺らが仕返しするのは理不尽ってもんだよなあ」


ねっとり耳にこびりつくような声に、寒気がする。


「ただ、俺らは忠告に来てやったんだよ」


「忠告?」


「お前らがしょっ引いた奴らは、紫樂の奴だけじゃなんだよなあ」


「・・・・・・」


「一緒に、鬼灯(おにび)組の奴らもいたんだよ」


「・・・・・・!」


紅雅の表情が凍り付く。


その顔にはわずかに焦りが滲んでいた。


「ごめんなあ?俺ら、鬼灯組と繋がってんだよお。だからさあ、よく一緒にいることも多いんだけど、今回そいつらがたまたまお前らのシマ荒らしちまって、お前らに片付けさせちまってさあ」


こいつ、まさか、仕組んでた?


「まあ、俺もお前ら見たら、仲間がやられたの思い出してついつい手が出ちゃったよ。ごめんなあ?それと、これからお前らが平和に過ごせることを祈ってるぜ」


それだけ言うと、その男は帰るぞ、と怒鳴ってから、仲間を引き連れて去って行った。


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