月夜に花が咲く頃に
「紅雅・・・・・・」


紅雅に声をかけると、紅雅はハッと我に返って、またいつもの無表情に戻る。


「・・・・・・光、怪我した奴、頼む」


「お、おう。ていうか、お前小田巻(おだまき)と何話してたんだ?」


「後で話す」


紅雅はそれだけ言ってさっさと階段を上がっていってしまった。


楓もそれに続き、光は他の子達の怪我を手当てし始める。


「光、手伝うよ」


光に声を掛けると、光はびっくりしたように飛び上がった。


「え、雫!?上にいたんじゃなかったっけ?」


・・・・・・今まで気づかなかったのか。


「大きい音が聞こえたから来ちゃったの。ほら、消毒貸して」


「おお、さんきゅ」


光と分担して怪我人に処置を施していく。


実際に怪我をした人は少なくて、早々に片付いた。


「そういえば、光は紫樂のあの男のこと、知ってたんだ」


「ん?ああ、小田巻のこと?まあ、紫樂は一応有名だし、あいつはその総長だからな」


あいつ、総長だったんだ。


「小田巻(みなと)。確か総長になったのは1年前だったっけ。そのすぐ後から、紫樂は汚い族って有名になったんだぜ」


「そうなんだ。じゃあ最初から薬とかやってた族ではないんだ?」


「んー、どうだろうなあ。それまでもやってたのが総長が変わって世間に露出した可能性もあるしなあ」


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