月夜に花が咲く頃に
光と話しながら幹部室へ行くと、ピリピリとした空気の中紅雅と楓が話し込んでいた。


「光。下の奴らの手当てありがとね」


「おう。あんま怪我してる奴もいなかったしな」


「雫ちゃんも。手伝ってくれてありがとう」


「いや、私特に何もしてないし」


楓が私たちに気づき、柔らかな笑顔を向けてくれる。


正直、それどころじゃないだろうに。


「光、雫。座れ」


腕を組んで眉間にしわを寄せた紅雅に顎で椅子をさされ、大人しくそれに従う。


私たちが座ったのを確認すると、紅雅は先ほどの小田巻との話を説明した。


「ふーん。鬼灯組ねぇ・・・・・・」


鬼灯組。


いわゆるヤクザの集まり。


薬や売春なんてもちろん、殺しの隠蔽や暗殺も仕事にしていると有名な組。


暴走族とはいえ、組相手じゃそう簡単に事は運ばない。


相手は大人だ。


それも、極悪非道の。


「とりあえず、全員一人行動は禁止だね。危なすぎる。俺らがいるときは少なくとも2人、それ以外は4、5人でまとまって行動しよう」


楓の意見に、紅雅も光も頷く。


「それと、雫ちゃん。君はしばらくここで寝泊まりすること」


「え、」


「緊急事態なんだ。今雫ちゃんを一人にするのは危険だ」


「でも、近くにいた方が迷惑じゃない?足手まといにはなりたくないよ」


「近くにいねえ方が迷惑だ。離れんな」


有無を言わさぬ紅雅の言葉に、言葉が詰まる。


結局、私は首を縦に振った。


光がぽん、と手を叩く。


「よしっ、じゃあ今日はもう寝ようぜ!あ、雫の部屋は俺と一緒でいいだろ?」


「「「いいわけあるかアホ」」」








< 96 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop