恋の休日
 人の話を聞かない玲人に史菜は何を言っても無駄なことを悟った。
 ミートスパゲティを食べようとしたとき、レストランに入ってきた小さな女の子が喜んで走っていると、目の前で転んだ。
 すぐにフォークを置いて女の子に駆け寄ると、半泣き状態で史菜を見上げた。膝や腕、顔などを見て、どこにも傷がないことに安心した。

「大丈夫?」
「うん・・・・・・」
「良かった。走ったら危ないからね?」
「うん」

 娘の元まで来た母親が何度も史菜に頭を下げてから奥のテーブル席へ向かって行った。

「小さい頃の史菜ちゃんもあんな感じだったのかな?」
「ううん」
「本当に? あ! 今度アルバムを見せてよ」
「また今度ね・・・・・・」

 アルバムを見せる約束をしてから席に座り直し、ミートスパゲティを食べると冷めてしまっていた。

「この後はどこへ行きたい?」
「えっと・・・・・・」

 パンフレットに書いてあった数々のイベントを思い出し、イルカショーとラッコのお食事、ペンギンの散歩に行くことにした。

「最後に土産を売っているところへ行ってもいい?」
「いいよ。てっきり午前中に買うと思っていた」
「荷物になる」

 ギフトショップの中にまだ入っていないので、どんなものがあるのか、楽しみにしていた。
 玲人が海の幸フライ定食を食べ終えたときにはミートスパゲティはまだ三分の一も残っていて、食べるペースを上げた。

「喉に詰まらせないようにね」

 せっかく玲人が言ってくれたのに、ミートスパゲティが変なところに入り、咳き込みながら水を飲んだ。
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