日替わり彼氏


「行くぞ!」


思い切り腕を引っ張られ、なんとか立ち上がる。


足をもつれさせ、何度も転びながらもペンションまで戻ってきた。


一体、なにがどうなってるのか__?


「逃げるぞ!」


「に、逃げるって?」


「いいから逃げるんだよ!」


そう言って大輔は、私をバイクに乗せた。


いつもは安全運転なのに、急発進するバイクに振り落とされないよう、腰にしがみつく。


「いいか!ずっと俺といたことにしろよ!あそこには1回行ったことあるけど、今日は俺とずっと一緒だったって!」


風の音に負けないよう、大輔が声を張り上げる。


やっぱり、さっき見たことは全部、現実なの?


抱き締められて愛を確認し合ったのに、先生は私を突き飛ばした。


それを、大輔が助けてくれた。


先生を突き落として__?


私に向かって叫び声を上げながら手を伸ばし、海に落ちていく先生。


全部が全部、本当に起こったことなの?


「止めて」


「おい、暴れるな!」


「止めてよ!」


大輔の背中を力任せに何度も叩くと、ようやくバイクは止まった。


「どういうことか、ちゃんと説明して!」


「いいのか?」


「えっ?」


「受け止める覚悟、あんのか?」


気遣うような優しい声に、私は小さく頷いた。


観念したのか、大きく息を吐き出した大輔は「俺たち日替わり彼氏は__」と話し出したんだ。


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