日替わり彼氏
寺本さんの言う通り、私はなにも罰せられることはなかった。
先生のことも、大輔のことも、弥恵のことも、日替わり彼氏そのものも正直に話したというのに。
「本当に何から何までありがとうございます」
退院の日、お母さんが寺本さんに頭を下げる。
どういうわけか、両親は寺本さんのことを全面的に信頼していた。
今回のことで、弁護士を立てたりと守ってくれたからかもしれない。
先生のときとは違い、彼氏だと寺本さんが名乗っても嫌な顔ひとつしなかったんだ。
学校は頃合いを見て転校することになった。
私としても、あの学校に通う勇気はない。
「なにもかも忘れるのよ」とお母さんが釘をさす。
「うん」
頷いたけど、忘れるなんて無理だ。
忘れるなんて__。
「気晴らしにどっか行かない?」
寺本さんは、忙しい仕事の合間を縫ってよく会いに来てくれた。
あんまり気乗りしないけど、ずっと断り続けるのも悪くて。
ドライブに行くことになった。
「なんか、懐かしいね?」
おそらく、日替わり彼女でデートした日のことを言っているんだろう。
もう、ずっと昔のことのように思える。
私だけ、生き残ってしまったような。