日替わり彼氏


私は転校した。


事件のことを何も知らない、高校に転入したんだ。


「柏木さん、彼氏いる?」


早速、仲良くなったクラスメイトにきかれ。


「うん」と答える。


「えー、どんな人?」


「年上で会社を経営してて、手がアンパンマンみたいなひと」


それを言うと、なぜかみんな笑うんだ。


寺本さんとは、私が高校を卒業したら結婚の約束をしている。


ずっと首を縦には振らなかった。


私だけが幸せになるのは、気が引けたからだ。


でも「君の幸せが僕の幸せなんだ」と言われて、前向きになれた。


寺本さんは、全力で私を守ってくれたから__。


ときにスマートで、ときに不器用な彼に、時間をかけて惹かれていった。


そして、私が高校を卒業する日。


「おめでとう」


彼が笑顔で迎えてくれる。


「実は、もう一つおめでとうがあるの」


「えっ?」


「赤ちゃん、できたみたい」


私が報告すると、寺本さんは数秒フリーズしたのち、跳び上がって喜んだ。


「じゃ、結婚してくれるよね?」


「__はい、もちろん」


私が頷くと、彼は涙を流して喜んだんだ。


私はとても幸せだった。


いろんなことを乗り越えて掴んだ幸せだから。




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