日替わり彼氏
「ここでいい」と駅前で言ったのに、ちゃんと家の前まで送ってくれた。
「未来の彼女になにかあったら大変だから」と。
1日デートをして、久しぶりに味わったどきどき感。
それは今も、私を優しく包み込んでいる。
肩を並べて歩く拓也は、1日ずっと私のことを気遣ってくれた。
「じゃ、また会えることを信じてる」
そう言って、拓也が手を差し出す。
最後の最後まで紳士的だと、その手を私は握った__。
ぐいっ。
手を引かれ、拓也の胸にぶつかった。
ぎゅっと強く、抱き締めらる。
「俺を選んで」と耳元で囁かれ、思わず私は頷いていた。
「やばい、ちょっと我慢できなかった」
私から体を離し、照れたように鼻をかいた拓也はそう言って去っていく。
その後ろ姿を、私はいつまでも見送る。
見えなくなるまで、いつまでも__。
そして心に決めたんだ。
拓也にしよう。
あんな彼氏となら、絶対に幸せになれるはず。
火曜日も水曜日も、もういい。
あれ以上の彼氏なんて現れるわけがない。
きっと、拓也なら幸せにしてくれるはず。
よし、決めた!
拓也を彼氏にする!