日替わり彼氏
スマホが鳴った。
知らない番号からだ。
「もしもし?」
『こちら日替わり彼氏の運営委員のものです』
「運営、委員?」
『はい。柏木智花さんでお間違いないですね?』
「そうですけど」
首を傾げながら答える。
一体、なんの用だというのか?
『今すぐ、増田順一とのデートにお戻り下さい』
「えっ?」
『水曜日の彼氏候補の、増田順一です』
すぐに、あのデブを思い出す。
そして私は「無理です」と、はっきり断った。
冗談じゃない。
あんなやつとデートするくらいなら、死んだほうがマシだ。
『それですと、日替わり彼氏そのものを辞退して頂きます』
「辞退って、辞めろってこと?」
『はい。全ての曜日の彼氏候補とデートをして頂き、最終的に1人を選ぶ、これが規則となっています』
「いや、あれは選ばないって」と口に出しかけたけど、言っても無理な空気だった。ここで辞退して、せっかくゲットしかけたイケメン彼氏を手放すのはもったいない。
放っておいても、拓也か真司くんのどちらかを選ぶことはできるんだ。
ここは我慢して、デートするしかないのか__。
「ごめん、ちょっと用事できたから」
弥恵に断りを入れて、私は来た道を戻った。
その足取りは、鉛のように重たかったけど。