日替わり彼氏


海が見えるレストランの、1番いい席につく。


眺めは最高だ。


目の前に、こいつさえ居なければ。


「えっと、智花ちゃんは好き嫌いとか、ない?」


「はい。あなただけは好きになれませんけど」と言いたいのを堪え、頷いた。


私はほとんど、会話をしていない。


「はい」か首を振るくらい。


こんなヤツと言葉を交わしたくないからだ。


デートに付き合うのも、そうしないと日替わり彼氏を辞めさせられてしまうから。つまり、彼氏をゲットするために、デートをしている。


「ここの料理は美味しいんだ」


そう言って、増田順一がにこっと笑う。


それだけで本当に気持ちが悪い。


景色と料理に集中することにした。


さすが有名レストランとあって、フルコースはどれも美味しい。


料理の写メを撮って、みんなに自慢しよう。


最後のデザート、ティラミスが運ばれてくる頃には、私の機嫌も多少は良くなっていた__。


「どういう人がタイプなのかな?」


そう尋ねられ「太ってないひと」と答えてやりたかったけど「優しいひとですかね」と、オブラートに包む。


それが裏目に出た。


増田はいきなり立ち上がり、ポケットからなにかを取り出すとテーブルの上に置いたんだ。


すると、店内の照明が消えた。


そして、私たちのテーブルをライトが照らす。


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