日替わり彼氏


へっ?


まさか?


おずおずとお弁当箱の蓋をあけ、卵焼きを大輔の口に運んでみる。


噛み下しながら、どんどんと表情が険しくなり。


「今度から、甘いやつな」


「えっ?」


「甘い卵焼きにしろっ、てんだよ!」


「は、はいっ!」


こいつ、甘い卵焼きが好きなんだ。


それが分かると、なんだか可笑しかった。


再び「アーン」と口を開けるので、唐揚げやらソーセージやらを食べさせる。


恋人同士が甘えているというよりは、強制的ではあったけど、極上ヤンキーとこうして触れ合うのは、それほど悪い気がしなかった。


「お前、彼氏いねーの?」


お弁当を食べ終えると、大輔は文字通り大の字になって空を見上げている。


「いない、けど」


「顔は可愛いのにな。性格が悪いんだろ?」


「そんなことないもん」


「そんなことある」


「じゃ、どうして日替わり彼氏なんかやってんの?」


反対に訊いてやった。


確かに近づき難いけど__怒ってない時は、普通にカッコいい。それに女って生き物は、ちょい悪に惹かれたりする。


彼女が居ても不思議じゃない。ましてや、こんなゲームみたいなのに参加する感じじゃないけど?


疑問に思っていると、大輔はあさってのほうを向いて答えた。


「色々あんだよ」


と。


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