日替わり彼氏
私たちは砂浜に下りた。
「ちょっと入ってみよう」
そんな風に思ったのは、後ろから気怠そうについてくる大輔と、距離が縮まったからか?誰もが恐れて近寄らなかったヤンキーと、こうしてデートしているから?
秋の気配が漂う海の水は、少しだけ冷たい。
「入らないの?」
「ガキかよ、お前」
ばしゃばしゃと足元だけ水浴びをする私を、遠くから退屈そうに見ている。
ここまで一緒に過ごしてみて分かったこと。
それは__大輔は、怖くない。
眉毛も細いし、すぐ睨みをきかせるし、ひとを寄せ付けないオーラを出しているけど、ふとした時に見せる笑顔は、可愛いらしいものがある。
これが俗に言う、ギャップ萌えというやつか。
下手をすれば、どの曜日の彼氏候補より自然でいられる。
「気持ちいいよ?」
そう言って、水をかけてやった。
「マジでガキ」
「ガキでいいわよ。同じ年じゃない」
さらに掛けてやると、いきなり海にダイブした大輔が足で水を蹴る。
「ちょ、信じられない!どっちがガキよ!」
「うるせー!」
まさか、あの坂口大輔とこうして笑い合える日が来るとは__。
あの極上ヤンキーを、彼氏にする?
それはイケメン彼氏より自慢できる、レア彼氏かも。