日替わり彼氏
「きゃっ!」
はしゃぎ過ぎたからか、小さな波に足を取られて転びそうになった。
ぐいっ。
腕を掴まれて、間一髪のところで全身が濡れずに済んだ。とはいっても、大輔と水の掛け合いでかなり濡れていたけど__。
そのまま引き寄せられ、胸にぶつかる。
「俺にしろよ」
「__えっ?」
「俺を彼氏にしろよ」
それはどこか、切実に聞こえる。
大輔という人間を、よく知ったからだろうか?
親が工務店をしていて、いずれ跡を継ぐらしい。兄弟が6人もいて、大輔は長男でいつも面倒を見ている。喧嘩は自分からは吹っかけない。
抱いていたイメージと程遠い大輔のことを、近くに感じた。
「俺なら、命をかけてお前を守る」
ぐっと抱き締められると、心までハグされたような気になる。
大輔の体温と、熱い気持ちが伝わってきて__。
私は小さく頷いていた。
この瞬間だけは、頭の中から拓也のことも真司くんのことも、きれいさっぱり消え去っていた。
家の前までバイクで送ってもらい、大輔を見送る。
もし付き合ったら、こうやってバイクに2ケツしてデートをするのかな。
そんなことを考えながら、日替わり彼氏最終日の【金曜日】を迎えた。