日替わり彼氏


次の待ち合わせ場所に向かう。


それは【学校】だった。


土曜日でも部活に来ている生徒が多く、校庭は賑わっている。


私服のため中に入るわけにもいかず、校門の前で彼氏候補を待つ。


このデートで、すべてを決めなければいけない。


どっちを選ぶのかを__。


ふと、私は顔を上げた。


音が聞こえてきたからだ。


バイクの音が。


爆音を轟かせたバイクは、私の前で止まった。


「ほらよ」


1回目のデートと同じように、ヘルメットを投げてよこす。


もう、髪の毛がぺったんこになるんだけどな。でも、そんなことこいつは気にしないだろう。


渋々、ヘルメットを被ってバイクの後ろに乗った。


「ちゃんと捕まってろよ」


そう言って、木曜日の彼氏候補だった大輔がバイクを走らせる。


すぐに車の波に乗り、私は大輔の腰に手をしっかりと回したまま、背中に頬をくっつけた。


この、風になる感覚、好きかも。


これを味わいたくてまた、再デートに選んだって知ったらこいつ、怒るかもね。


頭をからっぽにして、流れていく景色を眺めていた。


なにも考えたくない。


考えることが多すぎて、今だけはなにも考えたくなかったんだ__。


< 54 / 142 >

この作品をシェア

pagetop