日替わり彼氏
やばい、眠れなかった。
選んだ彼氏のことを考えるだけで、どきどきが止まらなかったんだ。
やっと私にも彼氏ができる。
それも、理想に近い年上彼氏が。
自然と頬も緩むってもの。でも、ちょっと濃い目のメイクしないと。恋人同士としての初めてのデートだ。好印象を与えないとね。
ナチュラルに見えるように、念入りにメイクをする。
私服にも気をつかう。
今週はずっと制服姿だったから、ちょっと大人びた格好にしよう。きっと、気に入ってくれるはずだ。
家を出て、電車に乗った。
待ち合わせの場所はかなり遠かったけど、1人で電車に揺られても気にならない。少し落ち着いていた胸の高鳴りが、駅に近くなると再び動き出し。
ロータリーの前で待つ。
選んだ答えに、後悔はない。
はじめっから、決まっていたと言ってもいい。
ずっと憧れていた年上彼氏と、付き合うことができるんだ。
そのとき、一台の車がすーっとロータリーに入ってきた。
ドアが開き、颯爽と降りてきたのは__。
「待ったか?」
「いえ、さっき来たところです」
「そうか。じゃ、行こうか?」
「はい」
今にも破裂しそうな胸の鼓動を抱え、私は車に乗り込んだ。
「今日は大人びた格好をしてるな___柏木」
そう、私を『柏木』と呼ぶのは、1人だけだ。