日替わり彼氏


ハンドルを握る先生の横顔を、私はチラ見する。


運転する時は眼鏡をかけるらしく、とても新鮮でつい__。


「俺は柏木の彼氏なんだから、遠慮するなよ」


「えっ」


「俺は柏木のものになったんだ。煮るなり焼くなり、ずーっと見るなり、好きにしろってこと」


そう言って薄っすら笑う先生。でも私は、やっぱり恥ずかしくて俯いてしまう。


こうして先生を独り占めできることが、まだ信じられなくて。


「まぁ、これからよろしくな」


軽く頭をぽんぽんされ、まるで子供扱いだ。


それでも先生の前じゃ、私はがちがちになってしまう。


彼氏彼女というより、これは完全な恋だ。


ずっとずっとずーっと、好きだった先生と付き合うことができる。


夢見心地なのも仕方ないよね?


先生は車の運転もうまくて、どちらかといえば飛ばすほうだ。滑らかに車を走らせ、その間も私の緊張を解そうと色んな話をしてくれる。


大人の気遣いに触れると、私までちょっぴり大人になった気がして。


本当に良かった。


やっぱり私が出した答えは正解だったんだ。


自分の気持ちに素直に従った。


だって私は、先生が好きだから。


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