日替わり彼氏
気づけば車の中で、手を握り合っていた。
曲がるときも、車線変更するときも、どんなときも先生は私の手を離さなかった。
本当は手のひらの汗を拭きたかったけど、ときおり動く指先が私の手を刺激して、先生と繋がってるんだと実感する。
行きとは違い、車内は沈黙する時間が多かった。
言葉を交わさなくても、思いは同じだからか。
「再デートに選ばれなかったから、俺は諦めたよ。柏木にフラれたんだなって」
「そんなこと、ないです。私は最初から、先生だって決めてたんで」
「ホントか?」
「はい。さっきの質問、どうして先生を選んだか。それは__先生のことがずっと好きだったからです」
やっと言えた。
ずっと胸にしまっていた、叶うはずがないと思っていた、本当の気持ち。
すると、先生が急ブレーキをかける。
前のめりに体が揺れたと思ったら、次の瞬間には唇を奪われていた。
「んっ」
思わず吐息が漏れる。
先生との初めてのキスは、大胆で激しくて、大人の味がした__。
「これは智花が悪い」
「わ、私が⁉︎」
「そうだ。先生が、先生じゃなくなるようなことを言うから」
私の顎を持った先生の指先が、私の唇を押し撫でていく。
「今だけ先生、やめてもいいか?」
「__はい」