日替わり彼氏


意味が分からなかった。


日替わり彼氏のデートをしていた?


日替わり彼氏は、もう終わったんじゃないのか?


「すまない。ずっと黙ってて」


「どういう、こと?」


「前に俺に聞いたな?どうして日替わり彼氏を始めたのか」


「__うん」


私はずっと、彼女を探すために始めたのかと思っていた。


でも、大輔とデートをするうち、こんなことをするタイプには思えなかった。だからなにか他に理由があるんじゃないか?それは先生にも当てはまることで__。


「実は、バイトなんだ」


「バイト?」


「教師の給料だけじゃ、やっていけなくてな。でも副業は禁止されている。だから、身バレをしない日替わり彼氏でバイトをしてる」


「じゃ、あの女のひとは、日替わり彼氏で?」


「ああ、黙っていて悪かった」


素直に頭を下げる先生は、うそをついているようには見えなかった。


「確かにお金のために軽い気持ちで始めたけど、智花への気持ちは本物だ」


先生の熱い言葉に、一気にわだかまりが消えていく。


でもまだ足りない。


「じゃ、証明して下さい」


まだ足りないんだ。


そのとき、私の頭の中に浮かんでいたのは、志保の言っていた『奴隷』というワードだった。


なんでも言うことをきいてくれる、奴隷彼氏。


「分かった。もう日替わり彼氏はやめる」


先生は力強く頷いた。


でも先生、まだ足りないよ?


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