日替わり彼氏
志保が死んだ。
車に轢かれて死んだという。
車は逃走していて、なにも分からない。
なにか悩んでいることはなかったか?とクラスで聞かれたらしいが、志保が自殺をするわけがない。
『結婚するんだ』
幸せそうな顔が目に浮かぶ。
私に日替わり彼氏を紹介してくれた。
私と先生が出会ったのも、志保のお陰だと言ってもいい。
ちょっと鼻につくところはあったけど、もう会えないと思うと寂しくなってくる__。
「泣くなよ」
先生はいつもの美術室で、優しく抱きしめてくれた。
涙が止まらない。
志保のことが悲しいというより、別れが突然くることを間近に感じたからだ。
先生にすがりつく。
ぎゅっと壊れるくらい抱き締められても、心に巣食った不安は拭いきれない。こうしている間にも、いつ別れが襲ってくるか分からないからだ。
「智花」
「先生」
私たちは、お互いの存在を確認するように抱き締め合う。
私の中に芽生えた不安を、先生も感じ取ってくれたんだろうか?
「俺は、智花を失いたくない」
ようやく体を離し、わずかに身を引いた先生は、私の涙を拭ってくれた。
「もっと智花を近くに感じていたいんだ」