偽装ウエディング~離婚前夜ですが、抱いて下さい。身ごもりましたが、この子は一人で育てます。~
翌日。

杏花をマリーナ地区に案内した。ドバイ初の専用ウォーターフロントの開発地区で、人口の都市用水路に高級レジデンス、ホテル、ショッピングモールや公園とペルシア湾岸に沿って、造られていた。

モールでウィンドショッピングを楽しみ、海沿いのオープンカフェで食事をした。
ハイビスカス柄の赤いマキシ丈ワンピースに身を包んだ杏花。

彼女のパールのような白い肌に赤いワンピースの色が映える。

「玲人さん?何ボーッしてるの?」

「別に…」
僕は不覚にも杏花に見惚れてしまっていた。

誰かのモノになる。
そんな風に思ったら、余計に想いを募らせてしまった。

僕たちはインドやペルシア風味のエミラティ料理を頂いた。
「初めて食べる味だけど美味しいわ。玲人さん」

「そうか…」

考えてみれば、僕たちはデートをしていなかった。

僕は美味しそうに料理食べる彼女の顔を見るだけでお腹はいっぱいになった。

父の愛が母を不幸にしてしまった。

そんな姿を見せられた僕は・・・

こうして笑顔を向けてくれる杏花を傷つけるのが怖くて、本当のキモチを伝えられない。

今はまだこうして手の届く場所に居る。でも、僕が日本に帰れば、彼女と僕は離婚する。

そして、食後は遊歩道を散策した。
杏花を見る男性の視線が気になった。
誰もが白い透明感のある日本人女性の柔肌に惹かれたんだろう。

彼女は砂漠の薔薇と呼ばれるアデニウムのようだった。



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