偽装ウエディング~離婚前夜ですが、抱いて下さい。身ごもりましたが、この子は一人で育てます。~
「玲人さん…こんなコトは良くあるんですか?」

「ドバイに来て初めてですよ…」

不安そうに眼を細め、今にも泣きそうな杏花。

「大丈夫ですよ…杏花」
彼女は迫りあがる不安なキモチを紛らすように僕のタキシードの上着の袖を掴んだ。

「杏花…」

僕は彼女の名前を呼び、優しく肩を抱いた。
初めて訪れたドバイの地で遭遇したテロに、杏花は怖くて堪らないようだ。

僕たちはホテルの従業員達の指示に従い、帰路に着き、部屋に戻った。

窓から射し込む月の光だけ部屋。

僕は彼女を静かに抱き締めた。

「玲人…さん!?」

「杏花…」

無差別に起きるテロ。
そのテロで命を失うコトさえある。
僕たちが生きている…それは奇跡かもしれない。
僕はその奇跡を彼女と分かち合いたくて求めてしまった。
理性ではなく、欲情に支配されたカラダは自分では制御できなかった。

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