偽装ウエディング~離婚前夜ですが、抱いて下さい。身ごもりましたが、この子は一人で育てます。~
「お前は隠してるつもりだけど…俺には分かるぞ…」

「そうですか…」
僕は眼鏡のブリッジを上げて自嘲的に笑う。

「…喧嘩したのか?」

「まぁ、そう言う所です…でも、拗らせてしまい…どうしようもなくて…」

「お前は言葉が足りないから…女はちゃんと言葉にして言わないと…分からないぞ」

「…」

僕は今まで、肌を交わすだけで女性との意思の疎通はして来なかった。

それでよかった。上手くいっていた。

「スキなんだろ?」

「スキですが…僕たちはもうおしまいです…」

「・・・杏花ちゃんが誰かのモノになってもいいのか?」

「彼女にはスキな人が居ます…きっと、僕よりも彼女をコトを大切にしてくれる人です」
「お前…仕事に関しては自信家のクセに…杏花ちゃんのコトに関しては自信無さすぎだな…」

「・・・僕はつまらない男ですから…」

「マジでつまらないぞ…玲人」

保は修人と同じ言葉を僕に言った。
あの時のトラウマが蘇る。

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