偽装ウエディング~離婚前夜ですが、抱いて下さい。身ごもりましたが、この子は一人で育てます。~
「後は貴方の名前を書くだけですよ…玲人さん」

「杏花…」

「…私達の離婚は最初から決まっていたコトですよね…」

「そうだね…僕が帰国した日が二人の離婚日…」

それは僕が言い出したコト。

杏花に『僕をスキになるな』と言っておいて、僕は杏花をスキになっていた。
スキ過ぎて、離婚するのがとても辛い。

「今日はもう遅いし…離婚日は明日でいいですか?玲人さん」

「あ・・・そうだな・・・」

「…玲人さん…離婚前夜ですが…私を抱いて下さい…最後に貴方の温もりが欲しいんです…」


「杏…花!?」

僕は杏花の申し出に言葉を詰まらせた。

「それは無理だよ…僕にはできない…」

「そう…玲人さんはそう言うと思いました…」

「ゴメン…」

僕はコーヒーを飲み終えると離婚届の用紙を持って、書斎に篭った。

杏花の誘いを受けるべきだったのか?

もう一度、彼女を抱き締めて素直なキモチを伝えるべきだったのか?

僕は離婚届にサインをする前に、杏花と話をしようと書斎を出た。

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