偽装ウエディング~離婚前夜ですが、抱いて下さい。身ごもりましたが、この子は一人で育てます。~
「杏花?」

キッチンで夕食の準備をしているはずの彼女の姿がなかった。
リビングにも居ない。

「杏花?」
僕は彼女が寝ているゲストルームのドアをノックする。
ノックしても反応はなく、居ない様。

僕は洗面ルームに足を運んだ。

杏花は洗面所で気分が悪いのか吐いていた。

「杏花!?どうした?気分が悪いのか?」

「何でもありません…」
彼女は屈めていたカラダを起こして、口許をタオルで拭きながら笑みを貼り付ける。
「何でも無い状況ですか!!?顔が真っ青ですよ!!」

僕は杏花の手を引いた。

「今直ぐに病院に行きますよ!!」

「大丈夫です!!」

「・・・僕たちは明日離婚します…でも、今はまだ夫婦。夫として最後の仕事として…妻の貴方を病院に連れて行きます!!」

「玲人…さん!?」

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