偽装ウエディング~離婚前夜ですが、抱いて下さい。身ごもりましたが、この子は一人で育てます。~
私達は同じ方向に歩き出した。
「もしかして同じ『リヴィエール』?」

「あ、はい」

「そのリクルートスーツで?」
玲人君も私の服装が店の雰囲気に合わないと思っていた。
「大学の先輩にOB訪問と言うか・・・」
「杏花さんの希望する業種は?」

「広告業界で働きたいの」
「大手を狙っているんですか?」
「出来れば・・・」
「その先輩は男性?採用権限のある人事関係の人ですか?」
「いえ、まだ、勤めて二年目です。部署も人事部じゃないわ」
「・・・そうですか・・・大学の先輩なら大丈夫かもしれませんが、杏花さん、危機感を持っておいた方いいですよ」
「玲人君・・・ありがとう」

「君は止めて下さい。玲人さんでお願いします」
彼は恥ずかしそうに少しだけ頬を染めた。
「わかった。玲人さん、ありがとう」
「言葉遣いも少し気を付けた方がいいですよ。普段から敬語に慣れておいた方が面接の時も困るコトありませんから」

「はい」

店に戻ると玲人さんは係の人を呼んだ。
携番とか『LINE』アカウントを訊きたかったけど、それは訊けなかった。
十一年振りの再会で、積もる話もあったけど、急いで先輩の元に戻った。
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