偽装ウエディング~離婚前夜ですが、抱いて下さい。身ごもりましたが、この子は一人で育てます。~
「遅かったね・・・電話しようと思っていたところだ」

「ゴメンなさい。久しぶりに知り合いに会った言うか・・・」

「知り合い?」

「母のホテルの常連のお客さんです」

「へぇー・・・」

「メインディッシュは?」

「俺一人食べるのは気が引けて・・・君を待っていた」
先輩は柔らかな笑みを湛え、ブザーを押し、給仕を呼んだ。
私はキモチを切り替えようとワイングラスに手を伸ばした。
芳醇な味わいの深みのあるフランス産のワイン。
店のエントランスから見える硝子張りのセラーは圧巻の印象を受けた。

「美味しい」

私好みの甘みと酸味の赤ワイン。

「ボトルに残ってるし、飲んで。ワイン好きな塩崎さんの為にオーダーしたワインだから」

「うん」
私は遠慮なく、飲んだ。
『危機感を持ちなさい』と玲人さんは忠告したけど。
先輩が睡眠薬とか媚薬を混入させて、私に何かしようと企んでるなんてあり得ない。
メインディッシュの肉料理が運ばれ、コース料理もラストスパート。
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