偽装ウエディング~離婚前夜ですが、抱いて下さい。身ごもりましたが、この子は一人で育てます。~
「誰も居ないけど…玲人さんは用心深いのね…」

「貴方が気にしないだけの話です…」

「…婚姻届はこれで良し。後はウエディングフォトです…杏花」

「えっ?
結婚式するんですか?」

「…式は挙げません…僕はタキシード、貴方はウエディングドレスを着て…写真を撮影するだけです。勿論、マリッジリングも用意します…すべての形を整え、僕はドバイに行きます。僕がドバイに行った後は…僕の部屋に住み、貴方は『順天堂』に就職して、社長秘書として働いて下さい」

「えぇ~っ!?」

「杏花が就職を希望した『順天堂』ですよ…もっと喜んで下さい」

「でも、どうして社長秘書?」

「・・・社長の白石達生(シライシタツキ)さんが僕の教育係ですから…達生さんの元に置いておけば…貴方には僕以外の悪い虫はつかない」


彼の手によって、私の人生のレールが勝手に引かれてしまった。

「さぁ~ホテルに帰りましょう…義彦さんの作る僕たちの祝い料理が待ってますよ。杏花」

玲人さんはコートの裾を揺らし、海に背を向けた。

砂浜に出来た二人の足音。

――――私達は共に人生を歩むのだと実感した。
でも、その二人の道には期限があった。
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