偽装ウエディング~離婚前夜ですが、抱いて下さい。身ごもりましたが、この子は一人で育てます。~
偽装のはじまりのキス
二人でウエディングフォトを撮影、銀座の老舗デパート『帝都百貨店』でマリッジリングを購入した。

彼の湾岸エリアにあるタワマン『タワーレジデンス・東京ベイ』に引っ越した。
高層階三十五階の海側の部屋。

ともかく一つ一つの部屋が広い。
二人で暮らすのにも広いと思うのに、私一人で暮らすには部屋があり余り過ぎる。
でも、明日からは、この部屋でひとり暮らし。
明日、玲人さんはドバイに旅立つから。

「これが僕と貴方のプロフを纏めた資料です。このファイルは僕の親戚関係の情報が記載されたモノ。
この部屋からの持ち出し禁止でお願いします。紛失は厳禁ですからね。杏花」


「はい」

彼は私が生活に困らぬよう、このマンションのルールをキチンと説明してくれた。
そして、これからお付き合いの始まる親戚関係の情報や応対の仕方まで詳しくファイルに纏めていた。

「貴方からの質問は?」

「別に…」

「何か困るコトがあったら、二十四時間対応しているので、連絡下さい」

「はい」

夫婦と言うよりも雇用主と従業員のような会話。
玲人さんの声に抑揚がないからそう思うのだろう。


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