偽装ウエディング~離婚前夜ですが、抱いて下さい。身ごもりましたが、この子は一人で育てます。~
「目を閉じてください…」

普段は抑揚なく聞こえる彼の声に感情が混ざっていた。
彼と私の身長差は二十センチ。

彼は私の肩に手を掛け、カラダを屈めて顔を寄せて来る。
「早く目を閉じてください…そうじゃないとそのままキスしますよ…」
余りにも優しく穏やかで温かい目をしているので思わず見惚れてしまい、目を閉じるのを忘れしまった。
私は慌てて目を瞑る前に、彼が私の唇を奪う。
くちゅと一瞬唇を吸われ、そのまま舌を割り入れて来て、口内に入って来た。

彼の滾る熱い舌先が私の隈なく口内を探って、蹂躙する。
そして、私の舌先を絡め取り、合わせた。

背筋に痺れるような電流が走った。

明日、日本を離れる貴方にこんな熱く甘いキスをされたら、一人残された私はどうしたらいいの?

彼は唇を離すと唾液の白い糸が引き合い、頬を染めた。


「本気を出し過ぎました…すいません…」

「・・・いえ…」

玲人さんの方からカラダを離して、眼鏡を掛け直す。

「あの…玲人さん」

「…一つ言い忘れたコトがあります…僕のコトは本気でスキにならないでくださいね…お互いに傷つかない為にもその方がいいので」

「え、あ…はい…」

先ほどの甘いキスの後に言うセリフに玲人らしさを感じた。

彼はクールな人…

彼は金とコネで私の悩みを全て解決してくれた。

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