偽装ウエディング~離婚前夜ですが、抱いて下さい。身ごもりましたが、この子は一人で育てます。~
「失礼します」

社長室とは違って、色んな音が響く『マーケティング部』フロア。

私はその喧騒の中をかい潜り、赤坂部長に社長の資料を手渡した。

友永先輩の姿はフロアになく、ホッと胸を撫で下ろして廊下に出た。

社長室に戻ろうと急ぎ足で歩いていると『塩崎!!』と友永先輩が私を呼んで、追い駆けて来る。

「あ…友永先輩」

無視すれば、いいのについ振り返ってしまった馬鹿な私。

「社長秘書の仕事は忙しい?」

「えぇ~まぁ」

「俺も忙しいよ…ねぇ~今度一緒に食事しない?」

友永先輩は私が人妻になったコトを知らない。
社内で、私が既婚者だって知る人は白石家の人達と人事部責任者だけ。

「塩崎さん…」

友永先輩に食事に誘われ、困っていると私に白石先生が近づいて来た。

「白石先生…」

白石幸人(シライシユキト)先生は我が社の産業医。普段は『東亜医科大付属病院』の呼吸器内科に勤務しているドクター。彼の父親は元人気俳優で今は大手芸能プロダクション「ギャラクシー」の取締役に就いていた。
『ギャラクシー』所属の国民的人気スター『有坂ルキ』とは異母兄弟に当たる。


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