偽装ウエディング~離婚前夜ですが、抱いて下さい。身ごもりましたが、この子は一人で育てます。~
私は給湯室に引っ込んで、カップに逢沢さんが作り置きしていたコーヒーを注ぐ。

私が給湯室を出ると、幸人さんが来ていた。幸人さんは時折こうして、社長室に来ては、樹生さんと話をして、産業医としての仕事をサボっていた。

「あ…杏花さん…」

「杏花さん…幸人の分のコーヒーもお願い」

「あ、はい」

私は応接ソファのテーブルに樹生さんのコーヒーを置き、幸人さんにもコーヒーを淹れに再び給湯室に入る。

二人は応接ソファに腰を下ろし、楽しそうに談笑していた。

「はい、幸人さん」

「ありがとう…杏花さん」

「あ、杏花さんも座れば…」

私は樹生さんに言われ、幸人さんの隣の肘掛ソファに腰を下ろした。

話題は来月生まれる赤ちゃんの話。

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