偽装ウエディング~離婚前夜ですが、抱いて下さい。身ごもりましたが、この子は一人で育てます。~
「塩崎さんは此処で何してるの?」

「何って…合コンよ…」

「合コン?へぇー…」

ルキは同じビル内にあるメディア部門だけを分離独立させた会社「順天堂メディアパークス」に出入りしていた。仕事の合間を縫い、樹生さんの元に来た。
秘書である私も自然と名前と顔を憶えられ、仲良しになった。

NKKの朝の連ドラのヒロインの相手役、大河ドラマ「織田信長」の信長役を好演し、国民的スターに昇り詰めた彼。

幸人さんと顔は似ているが、彼の方がスター性があり、普段でもキラキラして、芸能人オーラに包まれていた。

「これから、どうするの?」
「え、あ…どうしよう…帰りたくても、金あんまり持ってきてないし…」

「私が貸してあげる…幾ら?」

「いいの?塩崎さん」

「いいわよ…」

私達はそっとトイレの個室から出た。

私はルキ君にお金を貸した。

「サンキュー…今度会った時、必ず返すから…どうも有難う・・・塩崎さん」

彼は私のお金をブルゾンのポケットに裸のまま突っ込んで、先にお手洗いを出て行った。

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