3時になれば彼女は
考えるより先に、電車に飛び乗っていた。
埼京線、ばか、もっと早く走れ。
いてもたってもいられなくて、車両の端から先頭車両まで意味なく歩いた。
池袋駅で文字通り飛び降りると、東口まで全速力で走った。人にぶつかり、足を踏み、舌打ちされながら。
いけふくろう。いけふくろう。いけふくろう。
呪文のように口の中で繰り返す。その口の中が、どんどん塩辛くなってゆく。
いけふくろう。いけふくろう。いけふくろう。
どうかどうか、間に合ってくれ。

いけふくろうの像のでんまりとした腹の前にたどり着いたのは、2時51分だった。
肩で息をしながら千華の姿を探すが、見当たらない。
大学生という以外何の手がかりもないが、それらしき男も探してみる。
人待ち顔の男性はいることはいるが、「出会い系の女に会いにきた学生」に該当しそうな人はいない。

まだ来ていないのか。
――――それとも、間に合わなかったのか?
ふたりはもう、落ち合って行ってしまったのだろうか。
額から汗がぽたりと落ちた瞬間、腕時計が3時を指した。

そのとき、ポケットの中でスマホが震えた。
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