3時になれば彼女は
千華の名前が表示されている液晶を、俺は荒い呼吸を整えながら不思議な気持ちで見つめた。
え? なんでだ?
「…はい」
「総合公園で合ってる?」
苛立った千華の声が、スマホ越しに耳に届いた。
なんだ? なんなんだ。
「は?」
「総合公園のグラウンドって言ったよね? 今日の試合」
「いや、言ったけど…」
「オレンジの蜂蜜漬け作ってきてやったのに、誰もいないんだもん。都市公園かどこかと言い間違えたんじゃないかと思って」
俺はようやく事態を察した。
――――言葉が、出てこない。

「どこにいんの? 教えろよ、竜」
「おまえ、デートは? 埼玉理科大生は?」
「…嘘だもん」
「は!?」
「あたしが出会い系なんてやるはずないじゃんか」
へなへなと膝の力が抜けて、俺はいけふくろうの前にしゃがみこんだ。
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