キミ、が欲しい
いつもと変わらぬ通学路がザワついているのはヒシヒシと伝わってくる。
駅のホームで待ち合わせて隣同士で歩けば同じ学生たちが振り返って見てるね。
“お似合いカップル”って誰か言ってるよ?
腕を組んだら恥ずかしそうに笑う。
慣れてないって思ってたのに、ラッシュ時間になりつつあるホーム。
満員状態の車内で壁側に立たせて周りからガードしてくれてる。
時々押されて密着しちゃうけど、何も言わずにちゃんと守ってる姿は男らしかったよ。
駅から学校までの道のりもやっぱり注目の的。
「だ、大丈夫かな?」と心配してたハルもここまで来れば開き直ったのかもしれない。
腕を組んで歩く2人。
“結城星那に彼氏!?”
“格好良いけど誰!?”
“マジで!?狙ってたのに”
“あの2人付き合ってんの!?”
堂々と歩く2人に麻衣子も梓もびっくりしてる。
「ちょっと星那っ…!どういうこと!?」
2人には言ってなかったからびっくりするのも無理ないか。
「えっと……」
何から説明しようか。
「桜庭…晴人です、D組の」と自ら名乗ってくれた。
「えっ!?」
「えーっ!?!?」
つられて登場したのはハルと同じクラスの食堂で一緒だった子たち。
あまりの変わりように本気で驚いている。
こちらも無理ないよね、元が良いとこうも変身させられるから。
「マジで桜庭なのかよ…」
「星那がイメチェンしたんでしょ?」
「まぁ…ね」
一応、釘は刺しておきますか。
ビシッと麻衣子と梓に指差す。
「だからハルはダメだからね?」
「ダ、ダメって?」
「手出すなよ、的な?」