キミ、が欲しい



「え、だって須賀くんとは…?今キスしようとしてたもん…」



拓海と目が合う。
梓の手を引いて来て並んでもらった。



「ごめん、梓にお願いして拓海とよりを戻す演技…してもらったの」



「ふぇ〜ん…」



拓海がハルの肩を抱き
「何かハルちゃんがいきなりモテ期到来で調子のってるから天罰…らしいぜ?女って怖いよな?」とつけ足す。



「調子のってないよ〜」と更に泣き出す。



「ごめんね、ハル?おいで?」



手を広げたらうわーんと肩で泣かれる。



「やり過ぎ」と麻衣子たちにも呆れられて当然、かな。
昨日のハルは見てられなかったって。
梓もごめんね、拓海借りちゃった。



昨日、皆が帰ってからお母さんに携帯を貸してもらって正直に事情を説明した。
ハルに内緒にして麻衣子には病室まで連れて来てもらうことに。



麻衣子から合図が来たらもう病室の前だってことだから、さっきの拓海との演技に入ったわけで。
わざと聞こえるように話すから若干棒読みになっちゃったけど、ちゃんと真に受けて血相変えて入って来てくれた………



梓は最初から病室に居て、私たちの下手な演技に必死に笑いをこらえて見てくれてたんだよね。
結果、こんなに泣かれるとは思わなかったけど、ハルが拓海に叫んだ言葉……絶対に忘れないよ。



「でも良かった〜星那が…元に戻って〜」



「うん、最初から元の私…なんだけどね?」



再びドアが開いて。



「ったく、あんたたち!廊下にまで丸聞こえだよ?病院なんだから静かにしなさい」



と、お母さんに怒られて皆で謝る。



「しっかしそこまでして独占したい彼なんだね?お母さんもさっきのセリフ、感動しちゃったな」って言われて私もハルも真っ赤になって皆からもイジられて。






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