キミ、が欲しい
2人とも愛想笑いしてるけど、女子ってある日突然豹変しちゃうとこあるから。
友達の彼氏が一番格好良く見えたりする瞬間が、あるんだよねぇ。
たちまち学校中に噂が広まった。
同時にハルも注目の的だ。
クラスに入るなり友達に軽く袋叩きされたらしいし。
付き合ってるのかどうかってその質問ばかりされたってさ。
「何て答えたの?」
恥ずかしそうに俯きながら
「ご、ご想像にお任せします…って」と言うから笑った。
いいんじゃない?
ご想像にお任せで。
周りには仲が良いと映ってんのかしら?
「誰も結城さんに彼氏がいるって思いたくないんだよ、ましてや…相手が俺とか…」
最後の方はボソボソで聞き取りにくい。
「じゃあ手っ取り早く手繋いで校内歩いてみる?」
「いやっ、それは!やめとき…ましょう」
いっぱいいっぱいなると敬語になる。
すぐに真っ赤になるとこ、やっぱ可愛いな。
「じゃあ帰りは一緒に帰ろうね」
「あ、うん」
サッと腕から離れると寂しそう。
「あれ?もっと一緒に居たかった?」
「あっ、いや…」
私たちは学科が違うから靴箱でバイバイ。
授業で一緒になることはないし、校舎も違う。
手を振りながら見えなくなるまでバイバイしたら案の定麻衣子たちの質問攻め。
ブレザーのポケットに両手を入れながら上手くはぐらかす。
ストレートな茶髪は今日もサラサラでお気に入り。
胸元には赤いリボンタイ、紺色チェックのスカート。
「そういや星那、彼氏とか当分いらないって言ってたじゃん」
「結局一番先に作ってるし〜裏切り者〜!」
そして2人口を揃えて言うのが
「何で桜庭くん?」ということ。