キミ、が欲しい



二つ折りにした紙を見せて「メガネ男子、なんだけど」と言ったらD組のメガネ男子がたくさん立候補してくれたんだけど。




そんな皆をかき分けて真っすぐハルの元へと足を進める。
急に現れた私にびっくりしながら立ち上がれないハルに片足膝まつき右手を差し出す。
まるで姫を迎えに来た王子様のごとく。



「桜庭晴人くん、一緒に走っていただけますか?」



「えっ……!?」



「だってメガネ男子、だから」



チラッと後ろを見て「早くしないと最下位になっちゃう」と言ったらようやく理解したのか手を握り返してくれた。



そこからはスローモーションのように2人固く手を繋ぎながらゴールテープ目指して駆け抜けた。
ゴールしたら係の人に紙を見せて、内容と合ってるか見せなきゃならない。
違ったら不合格とみなされる。



紙を渡したら「え?本当に?」と言うから「本当です」と答えた。
見事合格して結果は3位だったけど一緒に走れたことに満足してた。



「ごめん、まさか来るとは思ってなかったから足もつれそうになった…」



手を繋いだまま息を整えてる。



「勢いで繋いじゃったね?」



「え?あっ…!」



とっさに手を離すハル。



「で、でもメガネかけてて良かった〜」



胸を撫で下ろすキミについに種明かしする時がきた。



「ありがとう、メガネ男子」と紙を渡した。
「?」な顔で受け取ったら「またね」とクラスに戻る私。



ね?訳わかんないよね。
遠ざかりながら見たら紙に目を落としてる。
次の瞬間、口を覆って耳まで真っ赤になっちゃった。
こっち見たから大きく手を振って背を向けた。



いちいちリアクション可愛い過ぎるから。






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