キミ、が欲しい
「だって……3年生と一緒に行ったの見えたから…」
表情が見たくて近付いた。
「心配で見に来てくれたの?」
「う、うん……ごめん」
「もしかして妬いてくれてるの?」
「ごめん…なさい」
指を絡めて手を繋ぐ。
「ありがと。一緒に回ろ?最後まで行ける?」
「うん…星那、怖くないの?」
「全然」
その後のコースでもハル一人の叫び声が響いてた。
可愛くて守ってあげたい感じ。
VRは隣同士でやったけど、私はつけずに本気で怖がってるハルを笑いながら見てた。
ヤバい、お腹よじれる。
リアクションでか過ぎ。
お腹の底から笑えたよ。
私、ハルに出逢ってから
本当に幸せなんだよ。
VR外して涙目になってるハルにたまらずキスしちゃう私を許してね。
大好きなんだ。
怖いわ、突然のキスに焦るわ、でいっぱいいっぱいだね。
お化け屋敷出た後に恥ずかしそうにハルの方から手を引いて歩いてくれた。
それだけで胸がいっぱいになるよ。
茹でタコさんは健在だけど。
初めて校内で手を繋いだ。
“え、どっちが本命?”
なんて声、正直どうでもいい。
“後藤がフラレた”
あら、可哀想に。
皆さん言いたい放題ね。
“結城星那 最強説”
……何が!?
「VRにつられて行っちゃったの、ごめんね?」
「うん、俺も居ても立ってもいられなくて…あんな捜し方しちゃってごめん、今考えても恥ずかしい…」
「嬉しかったよ?あんなに慌ててくれて」
もう少し様子見しても良かったかもって思うくらい。
何なら最後までハル1人で行ってもらっても…って言ったらきっと真っ赤な顔して「もう!」と怒るんだろう。
でも今は言わない。
きっと効果絶大なのはこのセリフ。
「だから、今日こそキスの次してみようか?」
「なっ、ななな…!」
思った通りのリアクションに自然と笑みがこぼれて、走り出す。
もう、このまま2人で抜け出したいくらい。
キミの隣で居れる幸せを噛みしめてる。
この瞳だけに映れたらそれでいいや。