キミ、が欲しい
「とりあえずここに座ってジッとしてればいいから」
日曜日。
とある美容室に彼を連れてきた。
終始オドオドしまくりの彼もきっと今日で終わり。
新しく生まれ変わったら自然と自信もついてくると思う。
まずは見た目。
野暮ったい長さの髪はカットして明るく染める。
色も細かくオーダーしておいた。
メガネ取ったら本人もよく見えてないからこっちにとっては好都合。
終わって見てみるとやっぱり格好いい。
本気で原石見つけちゃったって感じ。
そそくさとメガネをかけて鏡を見た瞬間、一番びっくりしてる。
「お、俺っ!?」
本当に二度見してる人初めて見た。
「どうよ?俺の技術」とドヤ顔の美容師は実は私の従兄弟のお兄ちゃん。
初めて男を連れて来たから張り切ってくれたけど「生まれ変わらせてほしい人がいる」とだけ伝えておいて正解だった。
「はいはい、まだまだ行くとこあるからね〜」
長居は無用、彼の腕を引っ張り店を出る。
コンタクトにして、服を買った。
「えっと……どうですか?」
全身生まれ変わった姿は本当イケメンでこっちが言葉を失う。
すれ違う人、皆が見てるよ?
聞こえてる?格好いいって声。
ほら、視界は良好なはずなのにちゃんと私のこと真っすぐ見れてるじゃない。
自信ついてる証拠だよね?
「結城…さん?」
「え?あ、ごめん」
「今日は本当にありがとう、何かよくわかんないけど来て良かった」
ゴツゴツした男子特有の手に触れたらすぐ顔真っ赤にして目をそらす。
「自信ついた?キミ、格好いいから」
「え?いや、いやぁ……その」